人間社会の様々な問題を解決する社会制度を理解する場合,伝統的に二分法(企業と政府)という枠組みが用いられてきた。しかし近年,地球規模での環境問題あるいは貧困問題の深刻化にみられるように,問題が増大し,かつ複雑化しているので新しい対応方法が種々提案されてきている。本稿では先ず,その一例としてノーベル平和賞受賞者ユヌス氏によって提案された「ソーシャル・ビジネス」という制度の概略を紹介するとともにそれを評価する。次いで,近年広がりを見せている「企業の社会的責任」(CSR,corporate social responsibility)という考え方による対応とその限界について,理論的な考察をするとともに,CSRに関してごく最近公刊された世界銀行エコノミストらによる経済学的視点からの展望論文の概要を紹介する。その結果,CSRは公共財あるいは公共サービスの供給において一定の意義がある一方,理論的ならびに実証的にみると限界もある,と理解する必要があることを指摘した。
内容記述
研究メモ
雑誌名
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies